残る二万円の役目、外食か、あるいは……

「ところで、あと2万円手元に残ってるんだけど、どっか食べにでもいく?」
今の、ぼくに傾いて要る恋人なら私のそういった申し入れを飲んでくれるだろうという誇りめいたものがあったが、
「駄目だ。前もって私の金額なのに何言ってるんだよ。それにな——」
「え?」
恋人は何かを言いたみたいに口篭もっておる。そして恥ずかしがりながら、
「その十万円だって、本当は成婚へそくりの増やしにするつもりだったんだよ……」
と打ち明けてきた。
「必ずや姿据え置きたがるよね、父親って。そんなの半年ぐらい共稼ぎすれば直ちに溜まるのに」
ぼくは気丈に振る舞ったが、恋人の肩にかぶりを振ろうとした。が、恋人は途端に丈を向けてしゃがみ込んでしまったのでぼくはつんのめって転びそうになった。
「それにしても、買い出し素晴らしいよな、奥様って。しみじみ感心するわ」
そのままの姿勢で、恋人はシャッター隅っこからリビングにかけて所狭しとピッタリ並んでいる靴箱やらスーツ、職務に関する小物などをしっかり眺めながらひと頻り感心していた。